捨ててしまって後悔しているもの。
例のウイルスの影響で自粛期間が始まり、家にいることが多くなった数か月前。中途半端に断捨離的ないしが芽生えて、服やあまり使わなくなっていたものを捨ててしまった。
その中で後悔しているものが、バリカン。
なんだか罰ゲームのように使われることが多いバリカンではあるけれど、人との身体的なふれあいを極端に嫌う僕は、床屋に行くのがめちゃくちゃ嫌い。頭部を触られている間どんな心境でいていいのかわからない。会話をする気にもなれないし、目をあわせるのも嫌なので、黙って目をつぶる。その時だけのハードボイルドタイム。苦痛。
髪は伸びる。誰しも(語弊がある)髪は伸びるので、行動に影響がでがち。煩わしかったり物理的に邪魔になったりする。
女子であれば、気を使い、髪質など気にして楽しみとして付き合っていくことはあるのだろうけれど、いかんせん、僕はおっさん。なので、髪の有無を話題にすることはあっても祖それ自体を楽しむことは稀。
床屋に行き口にするセリフと言えば「さっぱり」「すっきり」「適当に短く」くらいしかない。いかにも男らしい。「メシ」「風呂」「寝る」のようなものだ。いえる相手がいるのであればだけれど。
さておき、無くなれば絶望し、伸びれば文句を言われる髪の毛。これを支配できるのがバリカンである。
誰とも会話せず、誰に触れられるわけでもなく、一人でひっそりと「すっきり」できるのである。自分を自分で「すっきり」させる。うん。
この手段を僕は放棄してしまった。例のウイルスのせいで僕の生活に困難が生じている。これは危機だ。ストレスフリーな人生を目指している僕としてはかなりの失敗だ。買ってから7年間、あまり使っていた記憶がないものなのに失って初めて気が付いた。
ここまで愛していたのに。